調査機材について
探偵の調査機材について
私の知人には、70歳を越えてもまだ現役探偵として活躍している方がいます。 探偵といえば体力のある若者から中年まで、という先入観やイメージに反した年齢であることと、絶対に探偵には見えない風貌も手伝って、うちの臨時調査員として非常に有能な働きをしてくれる人です。彼はもともと探偵という仕事が好きで、ずいぶん昔にも知り合いの探偵社で調査を手伝っていたことがあったようです。 今とは違い、ピンホールレンズやCCDもなかった時代でしたので、そのカメラをコートのボタンに隠せば、ホテルを出入りする対象者を堂々と撮影できたといいます。映画のような話ですよね。 現在では、多くの種類の調査機材が広く流通しているため、調査機器に事欠くようなことはなくなりました。 *(注)使用頻度は当探偵事務所においての使用頻度です。 |
かつてはアナログの一眼レフカメラが王道とされていましたが、現在はデジタルの方が主流です。 現在のデジカメは画素数も高く、ISO感度も高くて多少の暗さでも明るく撮影できる物が出回っており、素人でも充分綺麗に撮れるカメラが主流です。 現場で使うデジカメを選ぶ時のポイントとしては、電源を入れてから撮影可能になるまでの起動時間、CCDの感度の良さ(CCD素子のサイズやフィルターにも左右されます)、ある程度の連写ができることやシャッター音の小ささも重要な要素です。 また、CCD素子は赤外線に反応しますので、デジカメのレンズやCCD前部にある赤外線カットフィルターを取り除いてストロボ等にIRフィルターを貼り付ければ、わりと簡単に赤外線カメラにもなります。 一眼レフカメラは現在もアナログ式を使うことがありますが、やはりデジタルに移行してきています。
対象者を連続撮影できる動画映像は証拠能力も高く、不倫のカップルが仲良く手をつないでホテルから出てくる様子や、ときにはそれ以上に生々しい実態をリアルに映し出すことができます。 1990年代まではビデオテープに録画されるものが主流でしたが、今や過去のものとなりました。 民生用のビデオカメラもRAW保存が対応していたり、4K画質で撮影することができるようになってきています。 デジタルカメラとデジタルビデオカメラが、一台二役のものも少なくありませんので、静止画として切り取っても充分に報告書に添付しても問題がないようにもできます。 さらに、他のカメラ(ピンホールCCDや暗視レンズ等)で撮影する場合、外部入力を使えばレコーダーとしても活用できます。
デジカメやコンパクトカメラを偽装するのではなく、最初からスパイカメラとして作られているものがあります。 非常にコンパクトなのが売りで、サイズもライターと同じくらいの大きさです。メガネやペンやキーホルダー、PC周りのアクセサリに偽装し、身に付けたり、バッグに仕込んで、対象者に悟られることなく撮影ができます。 スパイカメラではドイツのMINOXが有名ですが、以前これのOEMが富士フィルムから出ていました。 フィルムサイズから考えると凄いと思います。 余談ですがそう言っているうちに、MINOXでDSC(DigitalSpyCamera)シリーズが販売されました。往年のスパイカメラも、ついにデジタル化です。
「撮影能力の比較」の実例を見れば一目瞭然ですが、望遠カメラ・暗視カメラは夜間での撮影や遠距離からの撮影に絶大な威力を発揮します。もちろん市販のカメラにもズーム機能や(擬似的な)暗視撮影モードを持っている物はありますが、シビアな調査現場で使えるかどうかと言えば力不足な印象は否めません。 しかし、一部の探偵社ではこういった市販品の標準機能を指して「望遠カメラ・暗視カメラ」と呼んでいるケースもあるため、依頼する際にはきちんとした専用機材を持っているかの確認をしましょう。 また、機材の性能だけではなく、張り込み場所の取り方や、対象者の行動予測センスも問われることもありますので、調査員の研鑽も必要です。
調査での主役がカメラ類なら、それを支える三脚は「縁の下の力持ち」的な存在です。 撮影機材を固定しておくだけのものといってしまえばそれまでですが、主に車の中で使用する物、ひっそり建物の影で使用する物、地面に置いて使用する物と厳密にはいろいろな用途別に分かれています。 たとえば車の中や建物の影で固定して三脚を使用する場合は、重くてがっしりした作りの方が安定して良好な映像が得られます。 カタログスペックや値段だけを見て買うと、三脚によっては重量のあるカメラをうまく固定できなかったり、雲台もカメラの微妙な角度調整ができないものなどはイライラさせられたりするので、少しばかり高くても、ある程度使い勝手の良い物を探偵は吟味して選びます。 近頃は、固定したカメラの角度リモコン操作できる機能が付いた電動雲台がついた三脚等もあります。三脚は、なかなか意外と奥が深い機材です。
広帯域受信機とは、盗聴発見調査に使う機材で、ワイドバンドレシーバーとも呼ばれます。 よく盗聴発見のドキュメンタリー番組等でアンテナが付いたトランシーバーのような(ハンディ型)機材を見かけると思いますが、それも広帯域受信機の1つです。アマチュア無線で使うこともあります。 探偵社によってはこういったハンディ型の受信機だけで盗聴器発見調査を済ませてしまうところもありますが、これだけではあまりに見逃してしまう盗聴器が多いため、当社では必ず据え置きタイプの広帯域受信機と、後述するスペクトラムアナライザーも併用して漏れのない調査を実践しています。 機材の詳細については、専用ページがありますのでそちらも参照ください。
盗聴発見調査における切り札ともいえる機材で、当社が業界で初めて調査に導入しました。 スペクトラムアナライザーを使えば、広帯域受信機だけで調査するよりも検知できる幅が圧倒的に広がりますが、高額な導入コストと扱いの難しさが業者にとってネックになっています。 すべての業者がこういった機材を揃えられるのは、まだまだ当分先のことになるかもしれません。 これらの高品質な調査機材があれば誰でも探偵になれるのではないか? と錯覚する人もいますが、実際の現場ではそうはいかないのが実情です。 これだけ機材が進歩したとしても、機材に頼りきりにならずに十分に結果が出すことができる職人としての技量、臨機応変にあらゆる状況に対処できる能力が探偵にとって一番重要だと思います。 |