離婚をして子供の親権を獲得出来たが、養育費の金額で協議が長引いている。
そんな話をネットの中、または離婚の相談をされる依頼人からお聞きします。
同様の問題で悩んでいる方は、実に多くいらっしゃるでしょう。
子供の養育費で問題となっているのがお金を出す、出さないの問題ではなく
いったい何時まで、そして毎月いくらの金額を養育費として出すのか?
ということでしょう。
養育費の金額は、「子どもの人数」や「子どもの年齢」、「義務者(子どもと同居していない親の年収」、「権利者(子どもと同居する親)の年収」といった条件によって変わります。 その他にも、習い事や進学費なども考慮されます。
これらの条件を、裁判所が作成した養育費算定表に照らし合わせて決められることが多いです。
厚生労働省による「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」によると、1ヶ月あたりの養育費相場は、
母子世帯 子ども1人/38,207円 子ども2人/48,090円 父子世帯 子ども1人/29,375円 子ども2人/32,222円 と、されています。
引用:厚生労働省/平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告
年収別に見ますと、
年収権利者
200万円権利者
400万円義務者
300万円2~4万円 2~4万円 義務者
500万円4~6万円 2~4万円 引用:裁判所/養育費算定書
義務者が会社員ではなく自営業の場合は増額される傾向にあります。
養育費の支払期間は、一般的に子どもが成人するまでが目安とされています。
2022年4月の改正民法で、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられることで、「支払義務も18歳までになるのか」と不安になられる方もいると思いますが、そうはなりません。
法改正前に取り決めがされた分は、従前通り20歳まで支払義務が課せられることになります。
また、養育費は「子どもが経済的自立することを期待することができない場合に支払われるもの」です。
たとえば子どもが大学や専門学校に進学するような場合は、それらを卒業するまで支払義務が発生することが大半です。
このように、将来見込まれる子供の進学状況などを考え、養育費の支払終期を設定することが望ましいでしょう。
望月行政書士事務所
行政書士 望月義寛 養育費の支払いは、親権を持たず子供を直接監護していない側の親の義務です。
しかし、状況の変化により支払い金額が変更されたり、支払いそのものが必要なくなる場合もあります。
例えば子供の親権を持った元妻が再婚し、子供と再婚相手が養子縁組を行った場合、子供の扶養義務は元妻の再婚相手にも分担されることになります。
この場合、話し合いを行ったり、調停を起こすことで養育費の減額を見込むことができるでしょう。
一方で、そういった手続きを経ずに取り決められた養育費を払わない人もいます。
よく耳にする話に「裁判になれば養育費を払ってもらえる」、「裁判所の命令があれば大丈夫」という話がありますが、これは正しくありません。
たとえ裁判で養育費が認められ、裁判所から支払いの命令があったとしても、それを無視してまで養育費を払わない、という例まで存在するのです。
その場合、裁判所が支払う側の預金を差し押さえるなど、厳しい処分が言い渡されることがあります。
裁判所がそのような処分を下すまでには、支払いを受ける権利者が手続きを行わないといけない上に、それなりの時間がかかります。
もちろんその間も、子供との生活を維持しなくてはいけません。
離婚後の生活に子供の養育費を当てにしていた、という人がいる場合は、「養育費が支払われない可能性」について考えておくべきです。
実施するような状況にならないことが一番ですが、いざというときのため、元配偶者の財産を差し押さえる強制執行の手段も押さえておくことをおすすめします。
養育費を強制執行で回収する方法を教えてください。 元配偶者から支払われる養育費以外にも、子供の養育に必要な金銭を確保するために、児童手当や児童扶養手当など、行政で行われている母子(ひとり親)家庭の支援を活用することをおすすめします。
行政の手当は、自分から申請を行わないと受けることができません。
受給の開始までに時間がかかる場合もありますから、必要な手続きを事前に調べておきましょう。
参考:厚生労働省/児童扶養手当
参考:内閣府/児童手当
上でも少し触れましたが、養育費の相場は、支払う親と受け取る親の年収や働いている状況(サラリーマンか、自営業か)によって金額が変わってきます。
また、家のローンの支払いをしているなど、支払う側の経済状況によっては相場よりも低い支払額になることもあります。
養育費は、子供が成長する長い間支払いを続けたり、受けたりすることが多いものです。
両親がお互いに納得し、子供をきちんとした環境で養育するためにも、一般的な養育費の相場を知り、支払いを終える時期や条件についてしっかりと話し合いをするといいでしょう。
<おススメの文献>
「離婚する前に知っておきたい7つのこと-法律知識編-」本田幸則
「離婚するときの子どものはなし―引渡し、面会交流、養育費」馬場澤田法律事務所
「前向き離婚の教科書」森元 みのり