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養育費を強制執行で回収する方法を教えてください。

A: 養育費の支払いが滞ったときは、必要書類を揃えて裁判所に申立てをすることで、相手の給与や預貯金などを差し押さえることが可能です。強制執行の対象となる財産の種類や、手続きに必要な書類などを解説します。

養育費の強制執行の方法とは?

養育費の時効

養育費の強制執行について解説する前に、まず養育費の時効についてお話しましょう。

養育費の請求には、実は時効があります。

養育費は基本的に毎月支払われるものですが、このような一定期間ごとに継続して金銭の支払いを受ける権利を「定期給付債権」といいます。

  • 離婚協議書や公正証書で取り決めた場合 =5年
  •  
  • 判決や審判、調停調書などで養育費が定められた場合 =10年

と定められています。

養育費の時効は、毎月発生する支払分ごとに考える必要があります。協議書や公正証書で取り決めた養育費は、一般的に各月の支払期限から5年で時効にかかる可能性があります。

また、判決・審判・調停調書などで養育費が定められている場合でも、確定時にすでに支払期限が来ていた分と、将来発生する毎月の養育費では扱いが異なることがあります。過去分の請求や時効が問題になる場合は、弁護士に確認することをおすすめします。

引用:第166条(債権等の消滅時効)

たとえば、2026年6月分の養育費は2031年6月に時効になります。
また、2021年6月以前の養育費を2026年6月に請求しようとしても、相手が時効を援用した場合は請求できなくなる可能性があります。

引用:第169条(判決で確定した権利の消滅時効)

養育費の支払いが滞った場合にとれる手段

約束したはずの養育費の支払いが滞った場合、滞納されている養育費を回収するには、いくつかの方法があります。
それには、養育費についての取り決めをどのように行っていたか、が大きく関わってきます。


離婚調停や養育費調停で取り決めた場合

調停や審判など、裁判所が介入して養育費の支払いについて決めていた場合は、申立をすることで裁判所から履行命令を出してもらうことができます。

裁判所からの命令というプレッシャーの強いものなので、その時点で養育費の支払いを再開してもらえる可能性もあります。

履行命令を出しても支払いが再開されない場合は、強制執行を検討します。強制執行は別途申立てが必要になるため、履行命令に従わない場合は強制執行の手続きを行いましょう。

参照:履行勧告手続等|裁判所


夫婦間の話し合いで取り決めた内容を公正証書にしていた場合

養育費について、裁判所の介入なしに夫婦間での協議で話がまとまり、その内容を記した公正証書を作っていた場合は、公正証書の中に強制執行認諾文言を含めたかどうかを確認しましょう。強制執行認諾文言付き公正証書があれば、相手の給与や預貯金などを差し押さえる手続きを申し立てられる場合があります。

引用:第二十二条(債務名義)・第二十三条(強制執行をすることができる者の範囲)民事執行法 e-Gov法令検索


上記以外の方法で取り決めていた、又は取り決めをしていなかった場合

夫婦で養育費に関する取り決めはしたものの、合意書を公正証書にしなかった、口約束やメールでのやり取りだけで書類にしなかったという場合や、そもそも養育費について何も決めずに離婚してしまった、という場合もあるでしょう。

このような場合でも、2026年4月以降に発生する養育費については、一定の条件を満たすことで先取特権に基づく差押えを申し立てることができます。また、養育費の取り決めをしていなくても、2026年4月以降に離婚している場合は、法定養育費として子ども1人あたり月額2万円を請求できる制度が設けられています。

ただし、事情によって利用できる手続きが異なるため、相手に改めて養育費に関する協議を持ちかけたり、裁判所に申し立てて養育費調停を行ったりすることも検討しましょう。

養育費調停(審判)で決着がつけば、先述同様、裁判所からの履行命令や強制執行という措置が可能になります。

これらの法的手段で養育費を回収するためには、前項でご説明した時効の期間内に請求を行う必要があります。

時効期間が経過した後の請求では、相手が時効を援用すると、裁判上の請求や強制執行が難しくなる可能性があります。そのため、養育費の未払いが続いている場合は、時効期間が経過する前に対処することが重要です。

時効成立後であっても、相手が養育費の支払いに合意してくれるのであれば、それは支払ってもらって問題ありません。
しかし現実問題、一度養育費の支払いを渋った相手が、法的効力を失った請求に応じてくれる可能性は低いでしょう。


強制執行による養育費回収を成功させるためには

養育費の強制執行とはすなわち、養育費を回収するために相手の財産を差し押さえるということです。

実際に財産の差押えをするためには、相手がどのような財産をどこに所有しているのか、把握する必要があります。

養育費の差押えでは、給与から税金などを差し引いた手取額の2分の1まで差し押さえられるのが原則です。手取額が月66万円を超える場合は、33万円を除いた金額が上限になります。一般の借金などよりも、養育費は差押えの範囲が広く認められています。

預貯金や給料からでは必要分の養育費を回収できない場合は、養育費に換価できる財産が他にないか探さなければなりません。

相手が素直に自分の財産情報を教えてくれればいいのですが、強制執行による差押えから逃れるために財産隠しをする人も少なくありません。

相手にそのような悪意がない場合でも、離婚した相手に「養育費の差押えをするから口座番号を教えて」というようなことはなかなか言えないでしょう。

そのような状況下で、相手の財産情報を調べるには次の方法があります。


弁護士会照会制度を利用する

弁護士会照会制度を利用すると、弁護士を介して各銀行に全店照会を求めることができます。

全店照会をすると、その銀行に相手の口座が存在する場合は支店名や残高を確認できます。

ただし、離婚後相手の住所や電話番号が変わっていてわからないなどで、相手に関する情報が皆無に等しい場合は、弁護士会照会制度を利用しても無意味に終わる可能性が高いです。

引用:弁護士会照会制度/ 日本弁護士連合会


探偵に調査してもらう

人探しや行動調査を行っている探偵に依頼して、相手の現在の住所や勤務先を調べるという手もあります。

調査の結果、勤務先だけでなく車や不動産などの金銭以外の財産状況も判明する可能性もあります。

ただし、探偵に調査を依頼するとなると、それなりに高額な料金がかかってしまいますので、よく考えて判断しましょう。


財産開示手続きを行う

裁判所に申し立てて、相手に対する財産開示手続きを行うという方法もあります。

相手の財産が分からない場合に、財産開示手続や第三者からの情報取得手続を利用して、財産を把握します。

第三者からの情報取得手続では、一定の要件を満たすことで、勤務先、預貯金口座、不動産、上場株式などに関する情報を取得できることがあります。
ただし、情報取得手続は財産情報を得るための手続であり、実際に回収するには、差押えなどの手続が別途必要になる場合があります。

参照:第二百十三条(陳述等拒絶の罪)民事執行法 e-Gov法令検索


養育費の強制執行手続きについて

相手の財産情報を把握できたら、強制執行の手続きを進めていきましょう。
強制執行を行う際のおおまかな流れを簡単にご説明します。

  1. 債務名義となる書類に「執行文」を付与してもらう
  2. 「執行文」付の債務名義を相手に送達し、「送達証明書」を取得する
  3. 相手の住所地管轄の地方裁判所に差押えの申立てをする
  4. 裁判所が差押えを決定する
  5. 裁判所から「陳述書」と「送達通知書」が届いたら取り立てを行う
  6. 無事に取り立てが完了したら裁判所に「取立届」を提出する

差押え(強制執行)の申立の際に提出が必要な書類
  • 債務名義(正本)
  • 送達証明書
  • 収入印紙(申立手数料として)
  • 法務局で取得した資格証明書(登記事項証明書のこと)
  • 住民票や戸籍謄本
など

なお、差押えを行う財産の種類によって、手続きに必要となる書類が異なりますので、養育費や財産差押えに詳しい弁護士に相談しながら準備することをおすすめします。

強制執行までの流れも、差押えを行う財産の種類によって、若干違いがありますので、詳しい手続方法は事前に裁判所に確認しましょう。

参照:養育費に関する手続き/裁判所