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養育費を強制執行で回収する方法を教えてください。

A: 養育費の支払いが滞ったとき、必要書類を揃えて裁判所に申請することで、差し押さえなどの強制執行を行ってくれます。強制執行の対象となる財産の種類や、手続きに必要な書類などを解説します。

養育費の強制執行の方法とは?

養育費の時効

養育費の強制執行についてご説明する前に、まず養育費の時効について簡単にご説明します。

養育費を請求する権利は、民法でいうところの「定期金債権」に当たります。
一時的に金銭を請求するものではなく、家賃などのように定期的に継続して請求するもののことです。
「定期金債権」とは、養育費の場合、「養育費を受け取る権利」本体のことを指します。

「定期金債権」をもとに発生する個々の債権を「定期給付債権」と呼びます。
これは、養育費の場合「□年○月分の養育費を受け取る権利」に当たります。

この「定期給付債権」には消滅時効が存在し、その中でも養育費の請求権については、現在の民法(2020年2月現在)では時効期間は5年とされています。
また、養育費の請求権の本体にあたる「定期金債権」にも時効が存在し、

  • 第1回の弁済期から20年間行使しないとき
  • 最後の弁済期から10年間行使しないとき

となっています。

しかし、2020年4月1日からは、改正された新しい民法が適用されます。

「定期給付債権」、すなわち月々の養育費は5年の時効で消滅することになり、変わりがありません。 「定期金債権」の時効起点に変更が加わることになりました。

  • 養育費を請求できる権利を有していると知ったときから10年
  • 養育費を請求できる権利が発生したときから20年

となります。

基本的には養育費を請求する権利があるとご存知でしょうから、2020年4月1日以降の養育費の請求権は、一切なにもしなければ10年でまるごと消滅してしまうと覚えておきましょう。


養育費の支払いが滞った場合にとれる手段

約束したはずの養育費の支払いが滞った場合、滞納されている養育費を回収するには、いくつかの方法があります。
それには、養育費についての取り決めをどのように行っていたか、が大きく関わってきます。


離婚調停や養育費調停で取り決めた場合

調停や審判など、裁判所が介入して養育費の支払いについて決めていた場合は、申立をすることで裁判所から履行命令を出してもらうことができます。

裁判所からの命令というプレッシャーの強いものなので、その時点で養育費の支払いを再開してもらえる可能性もあります。

履行命令を出しても支払いが再開されない場合は、ただちに強制執行の手続きをとってもらうことができます。


夫婦間の話し合いで取り決めた内容を公正証書にしていた場合

養育費について、裁判所の介入なしに夫婦間での協議で話がまとまり、その内容を記した公正証書を作っていた場合は、その公正証書をもとに強制執行に踏み切ることができます。


上記以外の方法で取り決めていた、又は取り決めをしていなかった場合

夫婦で養育費に関する取り決めはしたものの、合意書を公正証書にしなかった、口約束やメールでのやり取りだけで書類にしなかったという場合や、そもそも養育費について何も決めずに離婚してしまった、という場合もあるでしょう。

この場合、そのままでは強制執行などの法的措置は取れませんので、相手に改めて養育費に関する協議を持ちかけるか、裁判所に申し立てて養育費調停を行う必要があります。

養育費調停(審判)で決着がつけば、先述同様、裁判所からの履行命令や強制執行という措置が可能になります。

これらの法的手段で養育費を回収するためには、前項でご説明した時効の期間内に請求を行う必要があります。

時効が成立してしまった後の請求では、裁判所からの命令を出すことも強制執行を行うこともできませんので、早めに対処することが重要です。

時効成立後であっても、相手が養育費の支払いに合意してくれるのであれば、それは支払ってもらって問題ありません。
しかし現実問題、一度養育費の支払いを渋った相手が、法的効力を失った請求に応じてくれる可能性は低いでしょう。


強制執行による養育費回収を成功させるためには

養育費の強制執行とはすなわち、養育費を回収するために相手の財産を差し押さえるということです。

実際に財産の差し押さえをするためには、相手がどのような財産をどこに所有しているのか、把握する必要があります。

預貯金や給料で言えば、どこの銀行のどの口座に預貯金があるのか、勤め先の企業はどこなのか、という情報がわかっていないと差し押さえのしようがないのです。

預貯金や給料からでは必要分の養育費を回収できない場合は、養育費に変えられる財産が他にないか探さなければなりません。

相手が素直に自分の財産情報を教えてくれればいいのですが、強制執行による差し押さえから逃れるために財産隠しをする人も少なくありません。

相手にそのような悪意がない場合でも、離婚した相手に「養育費の差し押さえをするから口座番号を教えて」というようなことはなかなか言えないでしょう。

そのような状況下で、相手の財産情報を調べるには次の方法があります。


弁護士会照会制度を利用する

弁護士会照会制度を利用すると、弁護士を介して各銀行に全店照会を求めることができます。

全店照会をすると、その銀行に相手の口座が存在する場合は支店名や残高を確認できます。

ただし、離婚後相手の住所や電話番号が変わっていてわからないなどで、相手に関する情報が皆無に等しい場合は、弁護士会照会制度を利用しても無意味に終わる可能性が高いです。


探偵に調査してもらう

人探しや行動調査を行っている探偵に依頼して、相手の現在の住所や勤務先を調べるという手もあります。

調査の結果、勤務先だけでなく車や不動産などの金銭以外の財産状況も判明する可能性もあります。

ただし、探偵に調査を依頼するとなると、それなりに高額な料金がかかってしまいますので、よく考えて判断しましょう。


財産開示手続きを行う

裁判所に申し立てて、相手に対する財産開示手続きを行うという方法もあります。
この財産開示手続きは、現状(2020年2月現在)では養育費調停など裁判所を介しての取り決めが成された場合にしか利用できない制度です。

しかし、民事執行法の改正により2020年4月からは、公正証書にて約束をした場合にも利用できるようになる見込みです。

また、法改正によって、財産開示命令に背いたり虚偽の開示をした場合の制裁が強化されるなど、これまでは強制執行による養育費の回収が困難だったようなケースでも、今後は養育費の回収が成功しやすくなる可能性があります。


養育費の強制執行手続きについて

相手の財産情報を把握できたら、強制執行の手続きを進めていきましょう。
強制執行を行う際のおおまかな流れを簡単にご説明します。

  1. 債務名義となる書類に「執行文」を付与してもらう
  2. 「執行文」付の債務名義を相手に送達し、「送達証明書」を取得する
  3. 相手の住所地管轄の地方裁判所に差し押さえの申立てをする
  4. 裁判所が差し押さえを決定する
  5. 裁判所から「陳述書」と「送達通知書」が届いたら取り立てを行う
  6. 無事に取り立てが完了したら裁判所に「取り立て届」を提出する

差し押さえ(強制執行)の申立の際に提出が必要な書類
  • 債務名義(正本)
  • 送達証明書
  • 収入印紙(申立手数料として)
  • 法務局で取得した資格証明書(登記事項証明書のこと)
  • 住民票や戸籍謄本
など

なお、差し押さえを行う財産の種類によって、手続きに必要となる書類が異なりますので、養育費や財産差し押さえに詳しい弁護士に相談しながら準備することをおすすめします。

強制執行までの流れも、差し押さえを行う財産の種類によって、若干違いがありますので、詳しい手続方法は事前に裁判所に確認しましょう。