離婚をして、毎月の養育費の支払いを決めていても、離婚をしてからしばらく経つと養育費の支払いが滞ることがあります。
養育費の支払いが滞る理由には様々な物がありますが、わざと理由もないのに養育費を支払わない人もいます。
そうしたとき、過去の支払われなかった養育費を支払ってもらうように、相手に請求することも出来ますが、未払いの養育費を無期限で請求できるわけではありません。
養育費というのは、「ひと月当たり○○万円」という単位での計算になり、毎月ごと又は2ヶ月に一度など、定期的に支払ってもらう形になります。
養育費の請求権はそのひと月分ごとに発生し、ひと月分の請求権の時効は5年となります。
例えば、
2020年4月分の養育費が約束の期日を過ぎても支払われない場合、その分は2025年3月までの間であれば請求できることになります。
ちなみに、2020年4月1日から民法が一部改正され、養育費を含む様々な債権に関する法の内容も変わりました。
民法改正に伴い請求の時効年数が変わったものもありますが、養育費に関しては直接的な影響はなく、改正前と変わらず、基本的な時効は「請求権が発生してから5年」となります。
既に請求権が発生している(弁済期が到来している)分の養育費が不払いのまま、あと少しで時効が成立してしまうという状況でも、できる事はあります。
相手(養育費を支払う側)に対し、改めて支払いの請求(催告)を行うのです。
その際、メールや電話だけではなく、内容証明郵便を使って必ず文書による催告を行うようにしましょう。
内容証明郵便は、文書の内容・その文書を送付した日付・相手がその文書を受け取った日付を郵便局が証明してくれるものなので、相手がとぼけてごまかすことはできません。
養育費支払いの催告を行い、相手もその事実を認識した状態にすることによって、時効の進行を一時的に止めることができます。
時効を一時的にストップさせたら、不払いの養育費について即座に支払ってもらうか、改めて支払いの約束をしてもらうなど、状況に適した対処をします。
その際に、当事者間のみで話し合い合意した内容を公正証書にするか、調停による話し合いを行うか、選択が別れます。
実は、どちらの方法で不払い養育費の支払いについて取り決めるかによって、その後の時効に違いが生じます。
不払いの養育費に関して当事者のみで話し合い、合意した内容を公正証書にした場合、その公正証書に定めた弁済期から新たに5年が時効となります。先述した「養育費の基本的な時効は5年」というのは、このケースに該当します。
最初に発生した時効を一時中断したわけですが、同じ時効が途中からまたカウントを再開するわけではなく、改めて5年の時効が発生します。
不払いの養育費に関して調停で取り決めをし、その内容を調停調書にした場合や、調停が裁判まで進んだ場合は、調停や裁判で決まった弁済期から10年が時効となります。
ただし、ここで時効が10年となるのは、今回の調停又は裁判で取り決めた分の養育費に関してのみです。
例えば、
2020年1月~2020年4月現在分の不払い養育費について今回の調停で取り決めをしたとします。
すると2020年1月~2020年4月現在分の養育費の時効は新たに10年となりますが、それ以降の、まだ弁済期の到来していない未来の分の養育費に関しては、基本通りの5年が時効となります。
時効が成立した分の養育費については、残念ながら法的に請求する手段はありません。
しかし、相手(養育費を支払う側)が「時効が成立したので支払いを拒否する」という意思を示さず、請求に応じる場合は、時効が過ぎた分の養育費も受け取ることはできます。
ですから、ダメ元でも一度相手に請求してみる、というのも手です。
ただ、時効成立後の養育費を快く支払ってもらえるケースは稀ですから、できる限り時効の期間内に養育費の請求を行えるよう、養育費の時効を意識して、支払いが滞た際には迅速に対処できるようにしておきましょう。
中には養育費について具体的な取り決めをせずに離婚してしまったというケースもあるでしょう。
そういう場合には、そもそも権利が発生していないため、時効も発生しません。
ただし、だからといっていつでも請求できるというわけではありません。養育費を支払ってもらうためには、養育費を支払ってもらうための権利を得るところから始める必要があります。
相手と話し合いを設け、養育費の支払について話し合い、協議書もしくは公正証書を作成します。
しかし、相手が話し合いに応じなかったり話し合いが決裂したときには、調停、裁判という段階を踏むことになります。