目次
離婚に伴う財産分与には、3つの種類があります。
一般的にいわれる財産分与は1つ目の「精算的財産分与」にあたり、婚姻期間中に夫婦の協力によって築かれた共有財産の全てを、夫婦に平等になるように精算して分けます。
この「精算的財産分与」において、財産分与の割合は原則として夫婦で半々とされていますが、「扶養的財産分与」や「慰謝料的財産分与」も行われる場合、総合的な財産分与の割合は必ずしも半々にならないケースがあります。
「扶養的財産分与」とは、離婚時に夫婦のどちらか一方が経済的弱者の状況にあり、「精算的財産分与」の金額だけでは離婚後の生活に著しく不安が残る場合などに、その点を考慮して多めに財産分与することです。
「慰謝料的財産分与」とは、不貞やDVなど離婚の原因を作った側が、相手側に慰謝料の代わりに多めに財産分与することです。
通常は財産分与と慰謝料は分けて考えられますが、慰謝料という名目を夫婦のどちらかが嫌がる場合などは、財産分与の一部として加算されることもある、というものです。
財産分与の3つの性質を理解したうえで、基本となる「精算的財産分与」(共有財産の分与)を行う際のポイントを見ていきましょう。
離婚において、財産分与には慰謝料のような決まった相場はありません。
財産分与の対象になる財産は、個々の家によって異なるからです。
たとえ年収が多くても外食や旅行などの浪費が多ければ財産が小額というケースもありますし、逆に年収が低くても堅実に貯蓄していたようなケースでは、財産分与額が多額になることもあります。
しかし、司法統計年報27令和元年度「財産分与の支払額別婚姻期間別」によれば、婚姻期間が5年未満で離婚する場合は、財産分与額100万円以下が半数を占めます。
逆に、婚姻期間が20年以上になると、100万円以下は1割未満で、1000万円以上が半数近くを占めています。
婚姻期間が長ければ長いほど、蓄積される財産が多くなり、結果財産分与額も増える傾向にあるといえるでしょう。
財産分与の対象になるのは、婚姻期間中に夫婦の協力によって築かれた全ての財産です。
つまり、夫婦の共有財産が多ければ多いほど、財産分与で受け取れる金額も多くなります。
貯金などのわかりやすく目に見える財産だけでなく、さまざまなものが分与すべき財産となります。
財産分与となるもの・ならないもの
〇なる |
×ならない |
---|---|
共有財産 |
特有財産 |
財産 例) |
財産 例) |
負債 例) |
負債 例) |
不動産や家具など現金の形ではないものは、売却したり評価額を調べるなどして、金額に換算します。
ただし、上記に当てはまるものでも、その一部は夫婦の一方が結婚前に独りで獲得したものだと言う場合は、その分の換算額を差し引いた金額が離婚における財産分与の対象となります。
負債に関しては、住宅ローンや生活費のために作った借金などがそれに該し、負債を返済するための金額が夫婦の財産分与額から平等に差し引くなどして、双方が負担しなければなりません。
また、不動産や株券など、財産分与の際に課税対象になるものもあることを知っておきましょう。
財産分与の額を増やすと言っても、本来受け取れる金額の上限を上げる、という意味ではなく、 本来受け取れるはずの適正な額での財産分与をするためのポイントを知る必要がある、ということです。
それはつまり、ポイントを知っておかないと、本来受け取れるはずの適正な金額で財産分与できない可能性がある、ということ。
財産分与で損をしないためにも、次のポイントを知っておきましょう。
夫婦の共有財産として何を持っていて、全部でいくらになるのか、互いに把握していないと、適正な財産分与はできません。
夫婦が互いに財産分与に協力的であれば問題ありませんが、中には財産隠しをされる場合もあります。
そうならないために、離婚を意識し始めた段階で、夫婦の共有財産の現状を調べて、写真に取るなどの証拠保全をしておきましょう。
また、弁護士に依頼すれば、弁護士会照会制度を利用して相手の財産を調べることもできます。
財産隠し以外にも、夫婦関係が悪く相手への嫌悪感情が強い場合などに、相手に財産を分けるのが嫌で早々に財産の整理や処分をする人もいます。
そのような可能性がある場合は、家庭裁判所に「財産処分禁止の保全処分の申立て」を行いましょう。
保全処分には、3つの手続きがあります。
いずれも、離婚において調停や審判など公的機関に介入してもらうときにのみ、利用することが可能です。
申立が受理されれば、相手が勝手に財産を処分することを防げます。
離婚に際して財産分与を行うことは義務ではなく、夫婦で合意すれば、厳密な財産分与を行わないという選択もできます。
そのため、財産分与について曖昧にしたままはぐらかされてしまう可能性もあるのです。
そうならないために、財産分与の請求は口頭だけでなく、メールや離婚協議書などの書面にも記載しましょう。
離婚前に別居していて話し合いができないという場合は、内容証明郵便にて財産分与を請求するのも手です。
財産分与に関する取り決めは、夫婦間での合意があれば自由内容で行なえます。
原則は夫婦で半々となっている財産分与ですが、お互いが納得して合意すれば、どちらか一方に多く財産を分与することもできます。
財産分与について、調停や審判など裁判所を介して取り決めを行う場合は、原則に従って2分の1の割合で計算されますが、個々の事情によってはその割合が変わってくることもあります。
例えば、夫婦共働きで、互いに同等の収入を稼いでおり、なおかつ家事や育児などは妻がほぼ全て担っていた、という場合、妻の方が婚姻生活の維持と財産の構築に、より貢献していたとみなされます。
このように、夫婦の貢献度に偏りがある場合は、貢献度の高い方に多く財産が分与される場合もあります。
財産分与で損をしないためには、離婚を意識し始めたときから、今回ご紹介したポイントを頭に入れて具体的な対策をしておくことが大切です。
また、請求できる期間は離婚から2年以内という制限があり、こちらも注意が必要です。
財産分与に関しては、分与の仕方が複雑なものも多く、個々のケースによって適切な対処も変わってくるので、離婚問題や財産分与に詳しい弁護士に相談する事をおすすめします。