パートナーが不倫をしたときには、不倫をしたパートナーと不倫相手両方に慰謝料を請求することができます。
不倫(不貞行為)はいわば民法上の「不法行為」に該当します。これは、「婚姻関係の維持」という夫婦の権利を侵したということであり、それに対する損害賠償を請求できるというわけです。
不倫慰謝料の請求は、パートナーと不倫相手両方にすることもできますし、パートナーのみ、不倫相手のみに請求することも可能です。
慰謝料の相場は、ケースバイケースですが、離婚する場合は100万円~300万円、離婚しない場合は数十万円~100万円程度といわれています。
では、不倫相手に慰謝料を請求したいと思ったとき、どのように請求すればよいのでしょうか?
不倫相手に慰謝料を請求するには、大きく2つの手段があります。
1つは、協議による交渉。2つめは、民事訴訟(裁判)を起こす方法です。
今回は、不倫相手に慰謝料を請求する2つの方法、そして慰謝料を請求できないケースについて詳しくご紹介していきます。
協議と、いわば話し合いのことです。不倫相手と書面上、もしくは対面で、慰謝料の額や支払い方法について話し合います。
不倫相手もあまり大事にしたくないと考え、交渉に応じることが大半です。
協議による交渉のメリットは、
裁判になると、支払額の相場はある程度決まっています。
ですが、協議の場合は法的束縛がないため、相手が合意さえすれば額を自由に設定できます。
ただし、あまりにも法外な値段(1億円、1000万円など)は後々相手に訴えられて無効となるケースも多いので、平均相場からかけ離れすぎない額を提示しましょう。
協議による交渉を行う場合の手順は、以下の通りです。
まずは、不倫相手に慰謝料を請求する意思があることを伝えます。
このときに内容証明郵便を使うとより効果的でしょう。
内容証明郵便とは、どんな内容の郵便を誰から誰に送ったのかを、日本郵便が証明してくれる制度です。
内容証明そのものに法的効力はありませんが、受け取ったにもかかわらず相手が無視をした場合には、後に裁判を起こしたとき、無視をした相手が不利になります。
この時点で弁護士など専門家をつけてもいいでしょう。
実際に不倫相手と交渉していきます。
書面だけで話がまとまることもあれば、実際に対面して交渉していくこともあります。顔を合わせたくなければ、弁護士に頼むとよいでしょう。
交渉するときには、万が一トラブルになったときのことを考え、交渉内容を録音に残しておくことをオススメします。
交渉で話がまとまれば、その旨を文書(示談書)に起こしましょう。
口約束だけでは、「言った言わない」の争いや未払いのトラブルが起きやすくなります。
こうしたリスクを押さえるためにも、必ず話し合いの内容は文書にしておき、相手にも渡して双方で保管します。
このとき注意してほしいのは、文書をただ渡すだけでなく、必ず不倫相手の署名・捺印をもらうということです。
署名・捺印がない場合、「勝手に作られた」といわれかねません。
示談書は後日作成のことが多いため、もう一度署名・捺印のために面会するか、もしくは郵送にて返送してもらうといいでしょう。
より慎重にしておきたいときは、割印をしておくという手もあります。
2つの文書に判子をまたがるように押すことで、2つの文書が関係していることを証明することができます。
示談書を作成することで、「契約を交わした」ことの証拠になるため、相手が支払を怠ったときには、裁判所に示談書を根拠とした支払訴訟を起こすことができます。
しかし、もっと効率よく慰謝料を回収できるのが「公正証書」として示談書を作成する方法です。
公正証書とは、役所など公証人立会いのもとで作成する文書のことで、こうして作られた文書は「公文書」として扱われます。
そのため、万が一支払が滞ったときには、裁判手続きを経ずに給料や財産差し押さえなど強制執行することが可能になります。
公正証書の作成には、1万円~2万円ほどかかりますが、多額の慰謝料に保険をかけると思えば、さほど高くない出費でしょう。
交渉をしたとしても慰謝料支払の合意に至らなかった場合、または支払いを取り決めたにもかかわらず支払ってくれないような場合に、民事訴訟(裁判)という手段で請求することが可能です。
まずは、裁判所に慰謝料請求の裁判を起こしたい旨を訴状にして提起します。
その訴状は裁判所から不倫相手の自宅へ送達されます。このときに第一回目の期日も指定されます。
実際の裁判が始まります。
裁判は一方の主張に対し、次の期日でもう一方が反論という形で行われるため、お互いの主張が出尽くさない限り終わりません。
期日は1~2ヶ月に1度の割合で実施されるため、長丁場になるケースがほとんどです。
実際の裁判では、判決まで争われることはほとんどありません。途中で双方の弁護士を仲介して和解を成立させることが大半です。
和解をした場合には、和解調書が作成されます。この調書は確定判決と同等の法的効力があるため、相手が支払を怠ったりすれば、給料や財産を差し押さえることが可能です。
和解が成立しなかったときには、そのまま裁判を続行し、尋問、判決へと進みます。
判決前の「尋問」は請求する側にとっても大きな負担になるため、弁護士と相談したほうがいいでしょう。
判決が出ても、相手が控訴をしないとは限らないため、ここで確実に終了とならない可能性があることに注意しておいてください。
裁判にはいうまでもなく費用がかかりますが、その費用はどうなるのでしょうか?
費用は判決の際に、訴訟費用の負担割合まで指定されることが多いです。勝訴したとしても、必ずしも自分の負担がないとは限らないため、注意した方がよいでしょう。
基本的には不倫相手に慰謝料を請求できるものですが、中には慰謝料請求が認められないケースもあります。
慰謝料が請求できるのは、あくまでも「婚姻関係に対する不法行為」に対してであり、恋人同士の場合は請求対象になりません。
ただし、結婚していなくても、婚約関係や内縁関係にある場合は、請求を認められます。
パートナーが既婚だと相手が知らなかった場合は「故意ではなかった」ことになり、不法行為としての責任を問えません。
場合によっては、パートナーが不倫相手に訴えられることもありえます。
パートナーが脅すような形で付き合っていた場合も、いうまでもなく請求の対象になりません。
「すでに夫婦関係が破綻していた場合」ですが、そもそも夫婦が別居していたような場合だと、「婚姻関係の維持を侵した」とはそもそもいえなくなります。そのため、慰謝料の請求が認められないことがあります。
そして、最後に「時効」です。不倫慰謝料の請求には時効があります。不倫の事実・相手の存在を知ったときから3年以内に請求権を行使しないと、その権利は消滅するので注意です。
不倫慰謝料はパートナーと不倫相手両方に請求することもできれば、どちらか一方にすることも可能です。
婚姻関係を続けたいと考えている場合には、パートナーには請求せず、不倫相手のみに請求するケースが多々見られます。
ですが、不倫相手は、自分だけがその責任を負うことを不服として、パートナーに責任負担の請求(求償)することができます。
つまり、パートナーに結局しっぺ返しがくるリスクがある、ということです。
どういう形で請求するかは、よく検討したほうがいいでしょう。
協議であっても裁判であっても、慰謝料を請求するときに必要になるのが「不倫の証拠」です。
不倫が事実であっても、それを証明するものがなければ、「不倫などしていない」としらばっくれられることがあります。
特に裁判では、不貞行為と認定されるために証拠は不可欠です。
この証拠がなければ、請求訴訟さえまともに起こせない可能性もあります。
不倫相手へ慰謝料を請求したいと考えている方は、まず不倫の証拠をきっちり集めることからはじめましょう。
証拠集めには探偵や興信所などの調査専門家、慰謝料請求が可能かどうかについては弁護士などの専門家に相談してみるといいでしょう。