相手が離婚に同意さえすれば、家庭内別居状態からでも離婚することは可能です。
しかし、相手が離婚に同意しない場合、調停や裁判によって離婚請求を行うことになります。
この調停や裁判で離婚の請求をした場合、離婚を求める根拠が単に「家庭内別居状態である」ということだけでは、調停委員や裁判所から離婚が認められない場合があります。
今回は、家庭内別居から離婚するために必要な条件について解説していきます。
家庭内別居とは、同じ家に暮しているものの、顔を合わせなかったり会話がなかったりと、別居しているのと変わらないような状態にあることをいいます。
具体的には、
といった特徴が挙げられます。
「家庭内別居」から離婚したいと申し立てても、単に家庭内別居をしているという理由だけでは、調停や裁判の場で離婚は認められにくいです。なぜでしょうか?
民法(第770条)では、夫婦が離婚を請求できる理由として、5つの事項を定めています。
問題は、家庭内別居がこれらのうちのどれに当てはまるか、ということなのです。
たとえば家庭内別居の理由が一方の不貞行為であれば、1が当てはまります。
また、完全に別居状態であれば、「婚姻関係が破綻している」として5が認められることがあります。
ですが、一緒に暮している限りは「婚姻関係の破綻」は認められにくいのです。
では、家庭内別居で離婚したい場合、どのような条件があればいいのでしょうか?
民法770条では、離婚を請求できる事由の1つとして「悪意の遺棄」を定めています。
夫婦には「同居義務」「協力義務」「扶助義務」の3つの義務があります(民法752条)。悪意の遺棄とは、この3つの義務を怠って、責任を果たさないことをいいます。
この中の「同居義務」については、家庭内別居の場合は同じ家に暮しているため、義務に違反しているとは言えません。
しかし、夫婦の3つの義務の残り2つ、協力義務か扶助義務が果たされていない場合は、悪意の遺棄が成立し離婚理由として認められる可能性が十分にあります。
例えば、
など
このような状態は協力義務・扶助義務が果たされていないのは明白ですから、完全な別居状態ではなくても悪意の遺棄があったとして離婚が認められる可能性があります。
家庭内別居状態ではあるけど、離婚を請求できる理由の1~4に当てはまるような事情がない、という場合は、5つ目の「夫婦生活を継続できない重大な事由がある」ということを証明する必要があります。
「夫婦生活を継続できない重大な事由」で離婚を要求する場合、重要になるのは家庭内別居に至った理由です。
内容によっては離婚理由として認めてもらえないものもあるので注意しましょう。
次のようなケースは「夫婦生活を継続できない重大な事由」として認められやすいです。
とくに、DVを受けている場合は生命の安全に関わる事情ですので、その事実を証明できればほぼ確実に離婚を認めてもらえます。
明確な証拠を用意できなくても、警察や自治体の相談窓口などに相談すれば避難のためのサポートをしてくれますので、配偶者からのDVで離婚を考えている場合は、離婚できるかどうかで悩む前にまずは身の安全を確保してください。
逆に、次のようなケースでは「夫婦生活を継続できない重大な事由」としては認められない可能性が高いです。
これらのような場合、夫婦間での協力によりまだ状況改善の余地があると考えられ、法的な場では離婚理由として認めてもらうのは難しいです。
それでも離婚を強く望むならば、弁護士などに相談し、離婚が認められやすくなるように少しでも多くの条件を見つけて行くのが良いでしょう。
家庭内別居の場合、夫婦関係が破綻しているかどうかという判断の線引きが難しいケースが多いです。
相手が離婚を受け入れてくれない場合は調停や裁判で離婚を認めてもらわなければなりません。
そうなったとき、「悪意の遺棄」を主張するにしても「夫婦生活を継続できない重大な事由」を主張するにしても、自分の主張を裏付ける証拠があると有利です。
例えば、お金の使い込みを証明するクレジットカードの明細や、モラハラを受けた際の日記などです。
些細なものでも積み重なれば証拠として有力なものになりますから、できれば離婚を少しでも意識し始めたらその段階で記録を付けておくことをおすすめします。
また、家庭内別居期間中に、夫婦が新たに離婚の原因を作っている可能性もあります。
その証拠を集めることが出来れば、調停や裁判で離婚を請求するとき役立てることができます。