婚姻期間中に稼いだお金や購入した家などの財産は、夫婦共有の財産となります。
この共有財産を離婚時に夫婦それぞれで分け合うことを、財産分与といいます。
財産分与は慰謝料とは違い、不貞行為など離婚の理由を作った有責配偶者からも請求をすることができます。
ただし、財産分与はいつでも請求できるわけではありません。
財産分与では除斥期間が設けられており、その期間は「離婚時から2年間」となっています。
つまり、離婚が成立してから2年が経過するまでの間に請求しないと、その後は財産分与を求めることができないのです。
このことを「財産分与には2年の時効がある」と認識する方もいらっしゃるかもしれませんね。
たしかに、一定の期間が経過すると権利が消滅する、という点では、「時効」と「除斥期間」は同じです。
しかし、「時効」と「除斥期間」は似て非なるものです。
時効は、期間中に法的な手続きを行うことで、時効の一時停止や更新をすることができますが、 除斥期間では、法的な手続きの有無に関わらず、期間の一時停止や更新を行うことはできません。
つまり、時効のような消滅する請求権利への中断がないということです。
更に、時効の場合は、請求される側が時効期間の満了を知り、それを理由に支払いを拒否することで、請求する側の権利が完全になくなりますが、 除斥期間の場合は、請求される側の意思表示の有無に関係なく、定められた除斥期間が過ぎると自動的に請求権がなくなります。
つまり財産分与に関しては、原則として離婚時から2年以内が、請求できる唯一の機会なのです。
ただし、2年の除斥期間を過ぎたあとでも、当事者同士の話し合いによって相手側から財産分与の支払いを申し出られた場合は、その意思を受け入れ、分与される財産を受け取ることに問題はありません。
また、相手が離婚時に財産を隠していたことがわかった場合、財産隠しによる不当な財産分与は民法上の不法行為だということで、損害賠償として金銭の請求を行うことができる可能性があります。
財産分与には除斥期間があり、除斥期間を過ぎてしまうと財産分与ができなる、ということをご説明しました。
では、確実に財産分与をおこなうためには、どうすればいいのでしょうか?
いくつかの対策が考えられます。
確実に財産分与をしたいと思うなら、財産分与を求める調停や審判をおこなうのが最も有力な方法です。
調停や審判は、夫婦間での話し合いがまとまらなかったときの最終手段と考える方もいらしゃるかと思いますが、財産分与には離婚後2年以内という短い除斥期間がありますから、離婚後すぐに調停による取り決めを行なうのも賢明なやり方です。
調停や審判で取り決めれば、調停委員などの専門的第三者のアドバイスの元、適切な内容での財産分与の約束ができますし、約束した内容は調停調書などに記され法的効力が付きますから、万が一約束どおりに財産分与がされなかった際にもすぐに法的な対処ができます。
裁判所を介さずに(元)夫婦の話し合いで財産分与の取り決めをする場合は、取り決めた内容を公正証書に残すようにしましょう。
理想的なのは、離婚協議の際に一緒に財産分与についても取り決めることですが、離婚が成立したあとでも、2年以内であれば財産分与の請求ができますから、期間内に必ず財産分与を求める旨を相手に伝えましょう。
口約束だけではそのまま流されてしまい、約束をした・していないの水掛け論をしている間に2年が経過してしまう恐れもあるので、一度取り決めた約束は必ず公正証書に残すようしましょう。
調停を行なうにしても夫婦間の話し合いをするにしても、財産分与についてなんの知識や準備も無い状態では、適正な内容での財産分与ができません。
相手に言いくるめられて損な内容の約束をさせられてしまったり、財産を隠されたまま気付かずに約束に合意してしまうかもしれません。
財産分与は離婚してから考えればいい、と後回しにせずに、正式に離婚する前から少しずつ準備を始めましょう。