日本では、子どもの親権争いにおいて母親が有利と言われていて、約80%の割合で母親が子どもの親権者となっています。
その理由は、離婚に至るこれまでの生活で、母親の方が多くの時間を子どもと一緒に過ごしており、母親が親権者となった方が、離婚による子どもの生活の変化や精神的負担を小さくできる、という状況の家庭が大半だからです。
しかし、逆に言えば、20%は父親が親権を得ています。
親権を決める際、裁判所がもっとも重要視するのは「子どもが健康的で幸せに暮らせる環境はどちらか」という点です。
つまり、「母親よりも父親に親権を持たせたほうが子どもの幸せのためになる」と認めさせることができれば、父親でも親権を勝ち取ることができるのです。
ここでは、
を、わかりやすく例を交えながらご紹介します。
裁判所が親権者を定める判断基準は、大きく以下の6点が重要視されます。
子どもにとって母親は不可欠な存在であり、特に乳幼児(0~5歳)の場合は母親と離すべきではないという考え方です。
この原則が、親権争いで母親が有利になる大きな要因です。
子どもの現状を尊重して、なるべくこれまで育ってきた環境を変えないようにするべき、という考え方です。
たとえば、夫婦が別居していた場合、一定期間一方の親と暮らして安定した生活を送っている場合、その現状維持が推奨されることになります。
兄弟や姉妹は一緒に育てるほうが子どもにとっては良い、という考え方です。
兄弟姉妹が離れ離れにならないよう、一緒に引き取ることができる方が有利になります。
どちらの親と暮らしたいか、子どもの意思が尊重されます。
ただし子どもの年齢によって、判断の重みが変わります。
乳幼児~10歳前後
意思能力が乏しいとされ、意思以外の判断基準に重きが置かれます。
経済・居住・養育・教育などの環境が、より子どもにとって望ましいほうを選ぶべき、という考え方です。
ですが、経済力はさほど重要視されないので注意です。父親の方が圧倒的に経済的に安定していても、養育費を得ることで母親が不足分をまかなうことができるからです。
他方の親と子の面会交流により協力的な方を選ぶべき、という考え方です。
ただし、相手が子どもを虐待するなど面会交流を拒絶する正当な理由があれば、この限りではありません。
その他、これら6点の考え方の他に、監護に対する意欲や能力、子どもとの仲、監護補助者の有無などが考慮されます。
では、どのような状況・要素があると、父親が親権を獲得できる可能性が高いのでしょうか?
父親が親権を取るために有利となる条件をご紹介します。
母親が子どもに虐待をしていると明らかに認められる場合には、親権は父親側に認められる可能性が高いです。
虐待とは、暴行を加えるなどの身体的虐待はもちろん、暴言や罵声を浴びせるなどの心理的虐待も含まれます。
母親が子どもに対して「食事を与えない」「何日も同じ服を着せる」「お風呂に入らない」「学校に行かせない」などの育児放棄(ネグレクト)をしている場合も、父親に親権が認められることが多いです。
母親が子どもと父親を置いて家出した場合の離婚であれば、育児放棄とみなされて父親に親権が渡ることが多いです。
子どもが父親と暮らしたいと主張していれば、立派な判断材料となります。
特に10歳以上の子どもの主張は、有力な判断材料となります(子どもの意思の尊重については、『裁判所は何を基準に親権者を判断するのか』の(4)を参考にしてください)。
ただし、子どもの年齢や性格によっては親に気を遣い、自分の本当の気持ちを発言できない場合もあります。
その場合は、家庭裁判所の調査官が面談や調査を行うことになりますが、「お父さんと暮らしたいよね?」というふうに誘導しようとすると、かえって不利になることが多いので気をつけましょう。
以上4つが、父親が親権を取るのに有利なケースではありますが、もちろん、これらのケースに当てはまらなくても、父親が親権を得ることは可能です。
では、何をすればいいのでしょうか?
親権を取るために父親が押さえておくべきポイントを、次項で紹介していきます!
「妻が浮気をして離婚すれば、親権は父親だ」と思うかもしれませんが、実はそれは大きな間違いです。たとえ母親側に有責があって離婚に至ったとしても、それは夫婦間の問題であり、親権者の適格性とは別物だと考えられるゆえです。
ですが、浮気をした妻に親権は渡したくないですよね。そんなときは、妻が親権者として不適格と判断される証拠を積み上げることが大切です。
妻の不貞がわかったらやっておくこと
母親が「浮気をしていても子育てはおろそかにしていなかった」と主張するのを、真っ向から覆す証拠をきちんと残しておきましょう。
母親による子どもへの虐待や育児放棄を理由に離婚する場合は、その証拠をきちんと揃えることが大切です。
虐待・育児放棄の証拠になるもの
証拠は多ければ多いほど、親権取得に有利になります。
子どもの親権を得るためには、子どもの養育に関わってきた実績が不可欠です。
これは「子どものために仕事をしてお金を稼いできた」という実績ではなく、「どれだけ子どもに接してきたか」という実績です。
通常、フルタイムで働く父親のほうが「養育実績」は不利であることが多いのは事実ですが、しっかりと養育実績を提示することで母親同様の実績を認めらます。
実績作りのためにやっておくこと
養育実績は長ければ長いほど心象が良くなります。最低でも半年以上はきっちりと記録をとりましょう。
離婚後、子どもの生活費を稼ぐだけではなく、子どもと接し、子どもの成長にまつわるさまざまなことと向き合うための時間をしっかり確保できるのかは、大きな判断基準になります。
なので、母親側から「残業が多い」「不規則で子どもに悪影響になる」などと反論を受けると、父親側が不利になることがあります。
その反論をくつがえすため、職場に協力してもらって働き方を変える、仕事を変えるなど、「子どもといられる時間が確保できる」ことを提示できると有利になります。
仕事をしている以上、どうしても仕事が休めない、子どもと過ごす時間を削らなければならないという状況も出てきます。
そんなときのために、父親の代わりに子どもの世話をしてくれる存在や家事を手伝ってくれる存在がいるかどうかも、判断の大きなポイントになります。
両親や兄弟、親族など、協力してくれる人物をリストアップしておき、提示できるようにしておきましょう。
ただし、その協力者と子どもの関係が良好でない場合はプラス要素にならないので注意です。
あくまでも、子どもに辛い思いをさせない、寂しい思いをさせないということが優先されます。
裁判所が親権者を判断する基準に「母性優先の原則」があります(『裁判所は何を基準に親権者を判断するのか(1)』参考)。
乳幼児期の子どもは、よほどのことがない限り母親に親権が渡ります。
なので、少なくとも母性優先の原則が薄まる5歳を過ぎるまでは離婚を待ったほうがいいでしょう。
裁判所が親権者を判断する基準に「監護継続性の原則」があります(『裁判所は何を基準に親権者を判断するのか(2)』参考)。
子どもの生活の現状維持が優先されるため、夫婦別居になった際には、子どもと生活している方の親が親権取得に断然有利になります。
別居をするなら子どもを渡さない、渡さざるを得ないような状況であれば離婚まで別居せずにいることをおすすめします。
上記で説明したポイントをすべて揃えるのは難しいかもしれませんが、裁判では子どもに対する愛情の深さが評価されます。
どれだけ子どもの幸せを考えて健康に成長できる環境を整えてあげられるかという点が重要になるので、相手の悪い部分ばかりを主張して陥れようとする父親には裁判官も心証を悪くするかもしれません。
これまでの子育て状況と将来の発育環境など、総合的に見られるので、できるだけ早め早めの準備をしておいたほうがいいでしょう。
母親による不貞や虐待、育児放棄などが原因の離婚では、何よりも「証拠」が親権判断を左右します。
探偵事務所では裁判や調停でも有利になる証拠の取り方、集め方を心得ています。
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ぜひ、探偵事務所の利用も視野に入れてみてください。