結婚という契約を解消することになるため、離婚するにあたってはたくさんの決め事が必要になります。
その決め事を残す重要な書類が、今回ご説明する離婚協議書です。
離婚協議書を作成せずとも、離婚自体はすることができます。
しかし、口約束だけで離婚にまつわる決め事をしてしまうと、のちのち必ずといっていいほど「言った」「言わない」で争うことになります。
そんな争いを防ぐため、漏れのない離婚協議書を作りましょう。
このページでは、離婚協議書に記載しておくべき内容を細かく解説します。
離婚協議書で取り決めておくべき事柄には、次のようなものがあります。
順番に内容を確認してみましょう。
離婚において、特に揉め事になりやすいお金の問題は、離婚協議書に必ず記載しておくべきものです。
財産分与は、夫婦が婚姻中に築いた財産を分け合うことです。
一般的には5:5の割合で財産を分けることが多いですが、どちらかに落ち度があった場合や、財産形成への貢献度合いに大きな差があった場合などに、協議の上割合を変更することもあります。
そのため、離婚協議書には、
などを決定し、記載します。
年金分割とは、いわゆる年金の「二階部分」にあたる厚生年金等の支払い実績を、離婚する夫婦の間で分け合う制度です。
この制度を使うことで、老後に受け取る年金の不均衡を、ある程度均すことが可能となります。
たとえば、家事をこなすために夫婦のうち片方がパート勤務である、といったような場合、厚生年金に収める金額は夫婦間で異なります。
しかし、これではいざ年金の支払いを受けるとき、収入が少ないパート勤務の側の受け取り金額が少なくなるでしょう。
それを防ぐために、夫婦の合意のもと、年金分割制度を使うことができるのです。
年金分割制度には2種類あり、そのうち合意分割制度を使う場合には、分割の割合を夫婦で決める必要あります。
この割合を離婚協議書に記載しておくとよいでしょう。
年金分割は、離婚の成立後、年金事務所に行って手続きを行う必要があります。
離婚前に分割の割合を決定しても、離婚後手続きを放置してしまえば、厚生年金の分割は行われることはありません。
そのため、離婚前に決定した分割の割合を離婚協議書に記載して、手続きをごまかしたり、漏らしたりすることができないようにしましょう。
夫婦のうちどちらかの有責で離婚する場合、慰謝料を求めることがあります。
夫婦間の協議で慰謝料を決定するのであれば、その金額、支払い方法などを離婚協議書に記載すると良いでしょう。
具体的には、慰謝料を支払う理由(不貞行為があった、など)、金額、分割で支払う場合の回数、1回の支払金額などです。
後述しますが、離婚協議書を公正証書化することで、慰謝料の未払いを防ぎやすくなります。
離婚において、お金に次いでもめやすいのが、夫婦の間にいる子供のこと。
離婚協議書に記載しておきたい、子供にまつわる事柄を見てみましょう。
夫婦のどちらが子供の親権を持つかを記載します。
複数人のお子さんがいる場合は、それぞれの親権者を書いておきましょう。
子供の親権者は、非親権者から養育費を受け取る権利があります。
養育費の支払いについて、夫婦のうちどちらがどちらに支払うのか、支払いタイミング(月々、一括など)はいつか、金額はいくらか、などの事項を記載しておきましょう。
金額の目安がわからず決定に困る場合は、裁判所のHPからダウンロードできる、養育費算定表が目安になります。
離婚慰謝料の項目でも触れましたが、離婚協議書を公正証書化することで、養育費も未払いが防ぎやすくなります。
非親権者は、親権者に引き取られた子供と面会する権利を持ちます。
これは子供の権利でもあるため、面会交流についても離婚協議書に盛り込んでおくと良いでしょう。
面会交流で決めておくべきなのは、面会の頻度、日程の決め方、子供の受け渡し方法、連絡方法、行事への参加、子供へのプレゼントの可否などです。
また、場合によっては、子の成長によって面会の方法を再度協議する、などの約束を入れても良いかもしれません。
離婚協議書に盛り込んでおきたい項目をご説明してきました。
では、上記のような項目を満たした離婚協議書を作成するとして、全般的に注意をしておかなければならないのはどのようなことでしょうか?
…などが挙がります。
離婚してからでも、離婚後の条件を話し合うことはもちろんできます。
しかし、先に離婚届を出してしまうと、金銭を支払わなければならないなど不利益を被る側が、離婚後の協議に積極的ではなくなる場合がほとんどです。 そのため、離婚をする前に離婚協議書は作成しておくべきだと言えます。
また、法律や公序良俗に反する内容の離婚協議書は、いざその内容をめぐって争いになったとき、無効であると判断されることもありえます。
加えて、不足、誤りがあって、後からそれを主張しても、相手の合意がなければ変更は効きません。
署名、捺印する前に内容はしっかりと確認しておきましょう。
離婚協議書の不足、誤り、無効になる可能性の有無などは、夫婦だけで離婚協議書を作成した場合、判断が難しいことも多々あります。
その際は、弁護士、行政書士、司法書士などの専門家に確認、作成を依頼してみることをおすすめします。
各専門家によって得意な分野、できることが違いますから、夫婦の離婚においてどこに争点があるかを明確にしておくと、依頼しやすくなります。
また、金銭に関する約束が含まれる離婚協議書は、記載したい項目を書き出し、公証役場に作成を依頼しておくことを強くおすすめします。
公正証書化された離婚協議書は、そこに書かれた契約の金銭の未払いが発生したとき、裁判を経ずに強制執行を行うための「債務名義」として取り扱うことができるためです。
債務名義として離婚協議書を使う場合、記載が必要な内容が定められていますから、この場合も専門家に確認を依頼すると良いでしょう。